秋田の誇る魚醤しょっつるとは?後世に語り継ぎたい歴史や材料のこだわりに迫る!

日本の魚醬

秋田県は日本海に面した豊かな自然が広がり、海の幸に恵まれた土地です。  

その中でも、秋田県で愛される魚醤「しょっつる」は、秋田の味覚として、多くの人々に愛されてきました。  

昔から受け継がれる製法があり、素材へのこだわりや、手間暇を惜しまない職人の技で魚を長時間かけて発酵させることで、独特の風味と深い味わいを生み出しています。  

このしょっつるに使われるのは、秋田で水揚げされる新鮮なハタハタと塩のみ。

そして、ハタハタ1トンにつき、作られるしょっつるはなんとわずか500リットル

しかも実はハタハタの乱獲により、一時期はしょっつるを作ることすらままならなかった歴史があったんです。

今回は、しょっつるの魅力に迫り、秋田県の食文化と歴史を紐解いていきます。  

「しょっつる」の意味と歴史

しょっつるとは、「塩汁(しおじる)」が秋田の方言で訛って定着したものです。

しおじる、しおづる、しおづる、しょっづる、しょっつる!万歳!といった具合で…(笑)

そして、それだけ訛ったものが定着するということは、秋田の漁師町では当たり前のような存在であったことがわかりますね。

そうなんです!

昔、しょっつるは各家庭が自家製しているものでした。
というのは、昔、醤油が高級品だったころ、その醤油の代用として秋田の近海で良く獲れる魚(ハタハタ)を用いて作っていたのがルーツだからです。

その歴史は江戸時代初期にまでさかのぼります。
そして商業的な製造が始まったのは昭和60年代、1980年代頃からと言われています。

しかしその頃から、原料のハタハタの漁獲量が激減し、品質も落ちていきました。

ハタハタの漁獲量が落ちる中、伝統の味を守るために作り続ける作業は決して簡単ではありません。
時間とお金がかかる=商売に向いていない!!となってしまうからです。

採算が合わず、廃業を余儀なくされる製造業者が後を絶たない中でも真面目に伝統の味追求し、守ろうとした製造業者のおかげで、塩とハタハタのみで作られる、シンプルかつ深みのあるしょっつるの味が守られているわけです。

ああ、なんて深い!
(その感謝の気持ちを込めてしょっつるを買い、そしてこの記事をアツくしたためております!)

では、このしょっつるに欠かせない魚である「ハタハタ」とはそんなに特別なものなのか?
他の魚ではだめだったのか?
原料のハタハタについても掘り下げていきましょう!

 しょっつるの原料ハタハタ!神の魚の異名を持つ魚を掘り下げる!

冒頭から何度も連呼していますが、しょっつるの原料は「ハタハタ」という魚です。

うろこがなくって、つるんとしていて、ちょっとグロテスクな感じもしますが、ハタハタは漢字で「鰰」と書き、秋田県で雷(神鳴り)の鳴る秋ごろに産卵のためにたくさん水揚げされることからそう呼ばれていたそうです。

ハタハタの子はブリコ、と呼ばれていて、秋田音頭の曲の中にも

「秋田名物 八森ハタハタ 男鹿で男鹿ブリコ♪」

といったフレーズで登場します。

つるんとグロテスクな魚はたいがい深海魚系で(ほら、金目鯛とかもこんな感じでにてません??)、ハタハタも本来は深い海の底を回遊しているのですが、そんな魚が大量に水揚げされるのは、まさに神がかったこと!

大量に獲っては保存のために各家庭で塩漬けにしてしょっつるを作っていたわけですが、

乱獲が災いして1980年代には徐々に漁獲高が減っていき、90年代には絶滅の危機に瀕してしまいました。

92~95年の3年にわたる全面禁漁を経て、2000年代には徐々に漁獲高が回復していったわけなんですが、そのころには昔ながらの過程で作られたしょっつるの面影はすっかりなくなってしまい、混ざりもので風味の落ちた、ベツモノになりかかったと言われています。

そこで、伝統の味を後世へ伝えるべく、昔ながらの製法を再現し、シンプルかつ深みのある、伝統的なしょっつるがここに極まった!というわけです!

秋田県の郷土料理に欠かせない魚醤しょっつるの製法に迫る!

昔ながらのしょっつるの製法は

❶頭と内臓を取る(取らないで作る製法もあり)
❷塩を加えて樽で2年熟成させる(この間月に1回攪拌)
❸骨とブリコを取り除き、数回濾す
❹60度と80度で殺菌処理して冷凍保存
❺布で濾して3週間熟成
❻上澄みを濾紙で濾して瓶詰、完成

このように2年以上もの歳月をかけて丁寧に作られます。
さらに、現在では

・塩とハタハタのみで作ること
・魚臭さのない上品かつまろやかな味であること

という定義のもと、上質な味わいをキープしています。

仕上がったしょっつるは臭みがなく、クセがないマイルドな香りであり、様々な料理の隠し味に大活躍なのですが、特に秋田では獲れたハタハタにしょっつるを加えて煮てたべる「しょっつる鍋」は冬の秋田の郷土料理としてなくてはならないものになっています。

  

秋田のしょっつると他の地方のハタハタを使った魚醤の違いは?

子持ちハタハタ万歳!と言わんばかりの秋田のハタハタですが、実は春から秋にかけては別のところで水揚げされます。

それが日本海側の鳥取県から兵庫県あたりにかけてと、韓国沖です。

子持ちではなく、その代わりに脂がのっているのが特徴で、魚醤にして食べるよりかは、お魚の身を楽しむ食べ方がメインです。

ですが!ですがですよ。

魚醤マニアはここで終わりません(笑)

鳥取や兵庫で販売されているハタハタを原料にした魚醤、実はあるんです!

でも、山陰エリアで作られるハタハタの魚醤の多くは糀が加えられていて、秋田のしょっつるとは少し違いがあります。

糀が加えられているハタハタ魚醤は秋田のしょっつるに比べるとほんの少し甘さのある感じがあります。

しかし、塩とハタハタだけで勝負している、秋田のしょっつるは本当に素晴らしいですね!

韓国での魚醤はイワシがメインですが、ハタハタが使われることもあり、チゲやキムチのうま味UPに貢献しています。

まとめ

いかがだったでしょうか!

  • 秋田県の海の幸を活かした魚醤「しょっつる」が愛されている。
  • しょっつるは秋田の伝統的な製法と職人の技によって作られ、ハタハタと塩のみを使用する。
  • ハタハタの乱獲により一時期しょっつるの製造が困難となったが、伝統の味を守るために努力が続けられた。
  • 秋田のしょっつるは臭みがなく上品かつマイルドな味わいで、料理の隠し味やしょっつる鍋として親しまれている。
  • 他の地方のハタハタ魚醤とは異なり、秋田のしょっつるはシンプルな成分で作られており、その深い味わいが魅力とされている。

ちなみに、秋田しょっつるの伝統を守り続ける「諸井醸造」さんが手がける10年熟成のしょっつるはまさに最強で極上の味わいです♡

秋田県の食文化と歴史に根付いたしょっつるは、秋田の豊かな自然と海の幸を味わうための逸品と言えるでしょう。ぜひ歴史を感じながら味わい、そしてこの歴史を絶やさぬように応援してくださいね!

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